『たしか』
『たしか』
たしか高校生の頃だった
心が言葉を欲しがった
今まで隠れていたくせに
心が言葉を欲しがった
初めて言葉を使った日を
僕は覚えていない
父と母に教えてもらったのだろう
だけどやっぱり覚えていない
それと同じように
自分に心があると気がついた日も
僕は覚えていない
喜んだり、傷ついたり、誰かを好きになったり
いつから始まったのか僕は覚えていない
いつのまにか使っていた言葉を
知らない間に僕の中にあった心が
あの日突然、欲しがった
感情を言葉にするのは簡単だけど
心を言葉にするのは難しい
言葉だけでは足りなくて
言葉だけでは多すぎるのだ
それを初めて知ったのは
たしか高校生の頃だった